環境保全:気候変動への対応

炭素貯蔵、木造住宅の供給、太陽光標準装備の実装

当社グループは、平均気温の上昇や風水害など自然災害の頻発化・甚大化などの気候変動がもたらす影響が当社グループの事業活動のみならず、当社グループが事業を展開する地域・社会に大きな影響を与える重要な環境課題と認識しています。
当社グループは「マルチステークホルダーサステナビリティ」の考え方のもと、当社グループに直接的・間接危機に関係するすべてのステークホルダーに持続可能な「豊・楽・快」を提供するために事業活動を営んでいます。
例えば、温室効果ガスの増大は、平均気温の上昇、自然災害、農作物への被害、生態系の変化など様々に地域・社会に住まう人々に影響を与える可能性が指摘されています。人々の「豊・楽・快」なくらしの創造を経営理念とする当社グループは、これらの課題に向きあい、当社グループの事業を通じた気候変動への対応、脱炭素社会への実現に向けた取り組みを推進してまいります。

温室効果ガス排出削減・エネルギーマネジメントに向けた取り組み

当社グループでは、温室効果ガス排出がもたらす気候変動が当社グループが事業を展開する地域・社会の持続性に大きな影響を及ぼし得ると認識しており、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の算定やエネルギー使用量のモニタリングなどを行うことで、温室効果ガス排出の抑制、エネルギー使用の最適化を進めるほか、排出量の削減に向けた木造住宅の推進、木造住宅における省エネ推進、戸建住宅における太陽光パネルの標準設置、国内産木材の活用推進など、様々な取り組みによる効果を測定しております。

木造住宅の供給を通じた温室効果ガス排出量の削減

現在、日本の国土面積約7割を森林面積が占めており、そのうち、人工林面積は森林面積全体の約4割となっており、その多くが現在伐採期を迎えています。一方で、国内における国産材の消費の低迷によって十分な資源循環ができず、老朽化された人工林が放置されていることが大きな問題となっています。

樹木のCO2の吸収量は樹齢40~50年をピークに減少していき、さらに木材として使用できる樹齢期も50年程度が最適と言われています。CO2を効率的に貯蔵・削減していくためには、老齢化した樹木を適切に伐採し、木造住宅の建材として活用し炭素を長期固定しながら、新たな植林によって炭素量の吸収量を維持・拡大する健全な森林の資源循環・新陳代謝を保っていく必要があります。

木造住宅の材料製造時におけるCO2排出量は、他構造に対して少なく、一般的な木造住宅一戸あたりのCO2排出量(材料製造時)は鉄骨プレハブ住宅・鉄筋コンクリート住宅に対して、約1/3~1/4の排出量とされています。また、輸入材と比べて、国産材で家を建てる場合のCO2排出量は木材輸送過程(現地での陸上輸送や船による海上輸送)において、1/5まで抑制されるとされています。

当社グループは国内において木造住宅事業を営んでおり、木造による分譲住宅を企画・生産・販売することで国内の森林資源の保全・活用を推進しております。

木造住宅の木材輸送過程におけるCO2排出量

単位:kg-CO2

  欧州材住宅 国産材住宅の国内平均 地域材住宅(地産地消)
CO2排出量 6,782 1,206 494
  1. 一般社団法人 木造分譲住宅協会、ウッドマイルズ研究会「ウッドマイルズレポ―ト」データ
木材の炭素貯蔵効果

単位:トン

  鉄骨プレハブ住宅 鉄筋コンクリート住宅 木造住宅
炭素量 1.5 1.6 6.0
  1. 大熊幹章「地球環境保全と木材利用」

TCFD提言に対応した気候関連情報開示

ガバナンス

当社グループは、気候変動を含むサステナビリティ課題への取り組みを全社的に推進するため、取締役会の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を、執行機関である経営会議の附属機関として「サステナビリティ推進室」を設置しています。サステナビリティ委員会は社外取締役を委員長として、取締役により構成されます。サステナビリティ推進室は担当執行役員を室長として、取締役及び執行役員等により構成されます。
サステナビリティに関連するリスク及び機会の評価、方針及び計画の策定のほか、具体的な取組みの実行についてもサステナビリティ推進室が中心となり、当社グループの各部署と連携して活動しています。取組みの進捗状況は、四半期毎に監督機関であるサステナビリティ委員会において報告・審議されるとともに、その結果は取締役会に報告されます。

戦略

当社グループでは、気候変動に関連するリスク及び機会が事業戦略及び財務計画に与える影響を評価するため、分譲住宅事業を対象としてシナリオ分析を行っています。影響度評価の結果、識別した重要なリスクについては、いずれも対応計画を策定・実行しているか、または短期的に対応可能であるものと評価しており、事業戦略の見直しが必要なものはないものと判断しています。
リスク及び機会の評価にあたり、前提としたシナリオは次のとおりです。

(1.5℃/2℃シナリオ)

気候変動に対する規制が強化され、21世紀末までの気温上昇が2℃未満に抑えられることを前提とした移行リスク及び機会への影響が大きいシナリオ。
参照したシナリオ:IPCC第6次評価報告書「SSP1-2.6シナリオ」、IPCC「1.5℃特別報告書」、IEA「World Energy Outlook2022」、IEA「Net Zero Emissions by 2050 Scenario」

(4℃シナリオ)

気候変動に対する各国取り組みの足並みが揃わず、温暖化対策が進まないことから、21世紀末までの気温上昇が4℃上昇することを前提とした物理リスク及び機会への影響が大きいシナリオ。
参照したシナリオ:IPCC第6次評価報告書「SSP5-8.5シナリオ」

  1. IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル
  2. IEA(International Energy Agency):国際エネルギー機関

また、気候変動に関するリスクと機会の評価期間は、日本の地球温暖化対策計画を勘案し、評価期間を短期(現在~3年以内)・中期(~2030年まで)・長期(~2050年まで)に分類しています。また、財務的影響度は大(連結売上高の5%以上または連結経常利益の10%以上)・中(連結売上高の3%以上または連結経常利益の5%以上)・小(連結売上高の5%未満かつ連結経常利益の3%未満)に分類しています。

〈主要な気候関連リスク・機会と財務への影響、および対応方針〉

【移行リスク・機会】住宅の省エネ基準の引き上げ

日本では、2030年度の温室効果ガス排出削減目標の達成や2050年までのカーボンニュートラル実現に向け、住宅の省エネ基準の段階的な水準の引上げが予定されており、短期~中期的に追加原価の発生に伴う住宅原価増加の可能性が高いと判断しています。
一方で、ZEH等の省エネ水準の高い住宅の需要拡大に対し、省エネ基準を満たす高品質で低価格なデザイン住宅を提供することは、新規市場の拡大及び一棟単価・粗利の増加に繋がり、短期~中期的に売上高・利益が増加する可能性があり、財務的影響は大きいと判断しています。
リスクを最小化し、機会を最大化するため、環境規制及び市場の動向をみながら、環境負荷の低い住宅の開発・販売を強化してまいります。

【移行リスク】カーボンプライシング(炭素税・排出量取引等)の導入

カーボンプライシングは欧州を中心に世界中で導入が進んでおり、日本においても段階的な導入が検討されているため、中期~長期的に発現する可能性が高いと判断しています。また、炭素税や排出量規制がサプライチェーン全体に導入された場合、価格転嫁による住宅原価増加の可能性があり、炭素税等の単価を1.8万円/t-CO2と仮定すると、その財務的影響は大きいと判断しています。
財務的影響を最小化するため、指標と目標に記載のとおり、2030年度、2050年度に向けたScope1,2,3のCO2排出量の排出削減目標を設定し、その達成に向けた取組みを進めてまいります。

【物理リスク】気温上昇に伴う自然災害の激甚化や熱中症の増加

豪雨や台風などの自然災害が激甚化することにより、取引先の工場や物流等のサプライチェーンの被災や、施工現場が直接被災するリスクが高まり、生産性が低下する可能性がありますが、調達ルートを分散化しているため、財務的影響は小さいと判断しています。
また、住宅業界において大工業者の減少と高齢化が問題となる中、夏季の気温上昇は熱中症等のリスクが高まり、施工現場の生産性が低下する可能性があります。当該リスクの発現する時期は中期~長期的、猛暑日が約20日/年増加すると仮定した場合の財務的影響は中程度と判断しています。
自然災害の激甚化については、協力会社や調達ルートの分散化を行っておりますが、対策の強化を継続してまいります。また、大工業者の減少と熱中症の増加については、クラフトマン育成制度の強化拡大や、作業負荷が少ない工法の研究開発を推進してまいります。

リスク管理

当社グループでは、気候変動に関連するリスク及び機会の評価をTCFDの提言に基づき実施しています。気候関連リスク及び機会の評価はサステナビリティ推進室が中心となって当社グループの各部署を対象に実施し、サステナビリティ委員会に対応案と併せて報告され、審議されます。また、その結果はリスク管理委員会に共有するとともに取締役会に報告されます。
リスク管理委員会は、気候変動を含む全てのリスク評価結果に基づき、リスク軽減・移転・受入・制御を一体として検討し、取締役会へ報告するとともに、具体的な取組みは経営会議を通じて実行されます。

指標と目標

当社グループのCO2排出量は、温室効果ガス排出量の算定基準であるGHGプロトコルに基づき算定しており、削減目標の設定、取組みの検討及び評価を行ってまいります。排出量の実績については以下「温室効果ガス(GHG)排出状況」をご参照ください。
削減目標については、日本の温室効果ガス排出量削減目標を勘案し、グループ全体のScope1及びScope2のCO2排出量の販売棟数原単位(※)を2031年度までに2022年度比で33.6%削減すること、2050年度までにカーボンネットゼロとすることを目標といたしました。
Scope3については、Category11のCO2排出量の販売棟数原単位(※)を2031年度までに2022年度比で29.6%削減することを目標といたしましたが、今後は削減の対象範囲を拡大し、削減目標と併せて公表してまいります。

  1. CO2排出量を販売棟数で除したもの
温室効果ガス(GHG)排出状況

単位:t-CO2

分類 2020 2021 2022 内容
Scope 1 2,598 3,416 3,991 主に使用した燃料からのCO2排出量
Scope 2 1,914 2,076 2,681 購入した電力と熱に伴うCO2排出量
Scope 1,2 小計 4,512 5,491 6,672  
Scope 3        
- Category 1 101,371 143,515 165,016 購入した物品・サービス
- Category 2 2,860 5,512 2,911 資本財
- Category 3 912 1,130 1,360 Scope1,2に含まれない燃料・エネルギー
- Category 4 - - - 上流の輸送・流通(Category 1に計上)
- Category 5 5,801 6,577 8,431 事業から発生する廃棄物
- Category 6 295 406 525 出張
- Category 7 311 428 535 従業員の通勤
- Category 8 - - - 上流のリース資産(Scope1に計上)
- Category 9 - - - 下流の輸送、配送
- Category 10 - - - 販売した製品の加工
- Category 11 434,981 495,153 636,238 販売した製品の使用
- Category 12 8,531 9,672 12,398 販売した製品の廃棄後の処理
- Category 13 940 1,068 1,726 下流のリース資産
- Category 14 - - - フランチャイズ
- Category 15 - - - 投資
Scope3 小計 556,002 663,459 829,158  
Scope1,2,3合計 560,514 668,950 835,830  
販売棟数原単位 135.5 142.7 139.1  
(戸建分譲販売棟数) 4,136 4,689 6,011  
  1. 対象範囲はケイアイグループ全社